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受けよう「がん検診」検診・健診で見つかるおなかの病気のはなし

がん検診の目的、メリット・デメリット

がん治療の早期発見・早期治療の大切さ

がんは発見や治療が遅れるとその治療は困難になります。がんの部位別5年生存率(資料3参照)で分かる通り、病期(ステージ)が高くなればなるほど生存率は低下していきます。言い換えれば早く発見できればそれだけ予後が良い病気とも言えます。

胃がんでいえば第1期では94.6%、大腸がんも95.4%と高い値を示しています。しかしステージが進むにつれ生存率は低下していきます。いかにがん治療は早期発見・早期治療が大切なのかがわかります。

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資料3 部位別5年生存率

がん検診の目的

がん検診の目的はがんを見つけることではなく、検診の対象となる人たちの死亡率や罹患率を低下させることが目的です。いくらがん発見率の高い検診を受けても治療効果のないがんや、治療する必要のないがんがたくさん見つかるような場合は死亡率の低下の効果がありません。

これまでの研究成果で胃がん、肺がん、乳がん、子宮頸がん、大腸がんの5つのがんについては特定の方法で検診することで早期発見ができ、さらに治療を行うことで死亡率が低下することが科学的に証明されています。

この5大がんについては国が認めたがん検診があります。(資料4参照)各検診方法や対象年齢、検診間隔をご確認の上、定期的な検診の受診をお願いします。

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資料4 がん検診の種類

健診・検診で発見されたがんは予後がいい

資料5にある通り、胃がん、結腸がん、直腸がんは検診で見つかった場合(青いグラフ)は80%以上の5年生存率がありますが、症状があって発見された場合(赤いグラフ)は60%台に留まります。このように検診が早期発見・早期治療のカギとなることが分かります。

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資料5 部位別5年生存率(健診実施・未実施)

がん検診のメリット・デメリット

がん検診のメリット・デメリットは以下の通りです。

メリット

  • 救命効果がある。
  • 早期のがんを発見できる。
  • がん以外の病気を発見もでき、治療に結びつけられる。
  • 安心して生活できる。

デメリット

  • がん検診の判定・診断結果が100%正しいわけではない。
  • 結果的に不必要な治療な検査を受けてしまう可能性がある。
  • 検査によって体に負担がかかってしまうことがある。

このようにがん検診にもメリットとデメリットがありますので、よく考えた上で受診していただけたらと思います。

安心してがん検診を受けて頂くために

湘南東部総合病院ではまず院内に入る際に、検温を実施しています。また、待合スペースには患者様同士が向き合わないように椅子の向きを1方向にしてスペースを空けています。そして検査をする内視鏡室では防護服を着たスタッフが対応することで安心してがん検診を受けて頂けるように環境を整えています。

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検温チェック
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待合ブース
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防護服を着たスタッフ

バリウム検査でわかること

バリウム検査とは検査薬(バリウム)をゴクンと飲んでいただいて、まずバリウムが食道を通過する様子を見させていただきます。そして胃の中に空気を入れる発泡剤を飲んでいただいて胃を膨らました上で、検査台の上でゴロゴロと移動しながらレントゲン撮影を行います。なぜゴロゴロと移動するかというとバリウムを胃の奥の方に流すことや、一カ所だけだと、病気が隠れてしまうことがあるのでゴロゴロと移動頂いています。また、気になった部位(しわや突起物)を機械で押すことで病変を浮かび上がらせることもできます。

検査時間はだいたい5分くらいです。

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バリウム撮影したX線画像

内視鏡検査なら1回でわかる

内視鏡検査とは胃カメラ(または大腸カメラ)を口から(大腸カメラの場合肛門から)入れて、胃や大腸の内部を直接見て診察や必要なら処置を行います。静脈麻酔を使用して寝たままの検査も可能です。病変が疑われたらその場で組織を採取し、顕微鏡検査に出すことができます。今までバリウム検査で病変が疑われ、2次検査で胃カメラを別日で受けて頂くことが必要でしたが、内視鏡検査ですと1回で検査することが可能です。またご希望があれば胃がんの原因の1つであるピロリ菌の検査も同時にできます。

茅ヶ崎市では2017年から2年に1回内視鏡検査ができるようになりました。当院では4年間で1659名が検査を受け、そのうち173名が生検(顕微鏡検査)を実施し、うち7名からがんが見つかりました。

卓越したスタッフによる内視鏡治療

内視鏡検査で病変が見つかった時、内視鏡を使って腫瘍を切除したり、処置したりすることができます。手術で体にメスを入れることなく、術後の回復も早いのが特徴です。

写真1は丸印のところが盛り上がっていて、これを生検検査に実施したところ胃がんだった症例です。また写真2は狭い領域でどこが変化しているかわかりにくい状態だったため、色素を使用し、病変を浮かび上がらせました。この盛り上がったところが胃がんとなります。この患者様は内視鏡的粘膜剥離術(ESD)でがんを切除いたしました。

内視鏡的粘膜剥離術(ESD)は内視鏡で病変周辺にマーキングを実施し、粘膜下層に液体を注入して病変部分を浮かせた上で、医療用のメスを入れて粘膜の表面だけをはぎ取り、止血する術式です。このESDを実施するには卓越した内視鏡技術がないとできないのですが、湘南東部総合病院の内視鏡室はきちんと指導を受けたスタッフが内視鏡治療に携わっていますので、安心して検査を受けてください。

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写真1 内視鏡で見た胃
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写真2 色素を使用し、発見したポリープ

内視鏡治療の適応基準

ただこの内視鏡治療はすべての方に行えるわけではありません。粘膜層、粘膜下層という病気が浅いところにある方が適応になります。(資料8参照)固有筋層まで病気が進行してしまうと内視鏡では処置が難しいため、手術で取りましょうということになります。内視鏡検診で早く病変を見つけて、そのうえで内視鏡治療につなげることが、最も体に負担をかけずに治療ができる方法だと考えます。

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資料8 胃の粘膜について

ピロリ菌と胃がんの関係

ピロリ菌の感染が長期にわたって持続すると胃の粘膜が薄く痩せていく状態(萎縮)になります。この状態が進行すると一部は腸上皮化成となり、胃がんを引き起こしやすい状態を作り出してしまいます。

また、胃潰瘍、十二指腸潰瘍や胃炎などの患者様を対象としたわが国の調査では10年間で胃がんになった人の割合はピロリ菌に感染していない人では0%、ピロリ菌に感染している人では2.9%であったと報告されています。このことからピロリ菌に感染している人は胃がんのリスクがあるといえます。

ピロリ菌に感染されている方は通常除菌して菌をなくすのですが、それでもなくしきれない場合は定期的に内視鏡検査を実施して経過を見ます。

写真の方は非常に小さい範囲ですけども凹んでいる部分があったため、よく観察すると出血が確認されました。この部分を生検検査にかけると低分化腺がんというがんが発見されました。発見が早かったため、今はすっかりお元気なのですけども、見つかるのが少し遅かったらもっと進行していたかもしれないので、内視鏡検査が発見に役立てた一例です。

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写真3 出血が確認された胃

発見率はレントゲン検査の約6倍

当院での過去2年間のレントゲン検査と内視鏡検査のがん発見率はレントゲン検査(バリウム検査)は0.1%、内視鏡検査は0.69%と約6倍の発見率があり、やはりリアルタイムで色の変化が分かる内視鏡検査は病変を発見しやすいといえます。しかし、内視鏡検査は1日にできる件数が限られていることや、レントゲン検査よりも苦痛を伴いますので、ご自身の体調にあった検査を選んで頂けたらと思います。