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アミロイドβ抗体薬によるアルツハイマー病の治療について

当院では、2024年2月より、アルツハイマー病による軽度認知障害および軽度認知症に対するアミロイドβ抗体薬:レカネマブ (レケンビ®)による治療を開始しました。現在、ドナネマブ (ケサンラ®)による治療を選択することも可能となっています。

これらの薬にはアルツハイマー病の患者さまの脳に蓄積しているアミロイドを取り除く作用がありますが、点滴にかかる時間や治療間隔、有害事象の発現頻度など、異なる点もあります。

  レケンビ ケサンラ
治療にかかる時間 1時間 30分以上
治療間隔 2週間おき 4週間おき
治療期間 18ヶ月 18ヶ月*
有効性 18ヶ月の時点で約24週の進行抑制 76週の時点で約24週の進行抑制
IRの発生率 26.3% 8.7%
ARIA-Rの発生率 12.6% 24%

* ケサンラ®については、アミロイドβが充分に除去することができたと判断された場合、12ヶ月の時点で治療を終了します。

注意事項

  • 治療に先立って、髄液検査かアミロイドPETを行って、アルツハイマー病による軽度認知障害および軽度認知症であると明確に診断する必要があります。
    髄液検査:腰から針を刺して脳脊髄液を採取し、アミロイドβの量を測定します
    アミロイドPET:検査薬を静脈注射して、脳内のアミロイドβの蓄積の程度や分布を評価します
  • アルツハイマー病以外の認知症性疾患の患者さまや中等度以上に進行しているアルツハイマー病の患者さまに対して、これらの薬剤を投与することはできません。
  • いずれの薬も、投与開始から18ヶ月後の時点で、病気の進行を約6ヶ月遅らせるとされています (記憶障害を改善したり、アルツハイマー病を完治させる薬ではありません)。
  • いずれの薬剤も、点滴で投与します。点滴中あるいは点滴から24時間以内に、頭痛・悪寒・発熱・嘔気・嘔吐が生じることがあります (Infusion Reaction; IR)。有害事象の早期発見・早期対応を目的として、初回の治療は1泊2日の入院で行っています。重篤な有害事象が認められなければ、2回目以降については外来で治療を継続します。
  • アミロイド関連画像異常 (ARIA)という有害事象が知られており、脳浮腫 (ARIA-E)や脳出血 (ARIA-H)が生じることがあります。ARIAの多くが、治療開始から24週以内に生じる・無症状である・治療を一時的に中断することで軽快することが知られています。また、ApoE4遺伝子型のホモ接合体保持者ではARIAが高率に生じることが知られているので、治療に先立って血液検査を行い、ApoE4遺伝子型を確認することができます。ただし、この検査は自費扱いとなりますし、ApoE4遺伝子型によって治療内容が変わることはありません。
  • いずれの薬剤も、薬剤費だけで年間約300万円かかりますが、保険診療ですので、実際の支払額はより少額となります。また、高額療養費制度を活用することもできます。詳しくは病院またはクリニックの受付でご相談下さい。

アミロイドβ抗体薬による治療を希望される方は、主治医からの診療情報提供書をご準備ください。そして湘南東部クリニック脳神経内科(担当医:伊藤)をご予約の上ご来院下さい。なお、アルツハイマー病による軽度認知障害および軽度認知症の診断がついていない方については従来通り、湘南東部クリニック脳神経内科のメモリークリニックの初診枠をご予約下さい。